クロコダイル製品はその高級感と独特の風合いで多くの人々を魅了していますが、製品選びや購入時には以下のような疑問や興味を持つ方も多いのではないでしょうか。
- クロコダイル革の「竹腑」と「丸腑」の違いは?
- さまざまなクロコダイルの種類とその特徴は?
- 製品作成時に使われる「マット」や「グレージング」とは具体的にどのような技法なのか?
- 「無双」とはどのような製法で、なぜ特別なのか?
そんな疑問や興味を持っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、以下の内容を詳しく解説していきます。
- クロコダイル革の基本的な特性とその魅力
- クロコダイルの種類とそれぞれの特徴
- 製品作成時の技法や加工方法の詳細
この記事を読むことで、クロコダイル製品の魅力や選び方、その背後にある技法や特徴を深く理解することができるでしょう。
クロコダイル革の基本的な特性
クロコダイル革は、その独特の模様や質感から高級感を持ち、世界中で愛されています。
特に、クロコダイルの中でも希少性の高いイリエワニは、ワニ革の中でも最も高級とされており、ヨーロッパでは「ポロサス」とも呼ばれています。
竹斑(たけふ)
出典:池田工芸 革財布:80周年記念 “王者の緑”クロコダイル1頭を丸ごと堪能する、究極の“無双仕立て”長札入れ
ワニの腹部に見られる四角形をした特徴的な鱗があります。
この鱗の形状から「竹斑(たけふ)」と呼ばれます。
※参考画像の財布のカード入れやその周辺に使われているのが竹斑です。
四角形の鱗を竹の節のように見えることからこの名がつけられました。
丸斑(まるふ)・玉斑(たまふ)
出典:池田工芸 革財布:80周年記念 “王者の緑”クロコダイル1頭を丸ごと堪能する、究極の“無双仕立て”長札入れ
ワニの横腹の鱗の形状が丸く、全体のバランスが整っていることから「丸斑(まるふ)」または「玉斑(たまふ)」と呼ばれます。
※参考画像の財布の下の細かい鱗が玉斑・丸斑です。
この丸い鱗の特徴は、クロコダイル革の中でも特に美しいとされています。
穿孔(せんこう)
クロコダイル製品の特徴として「穿孔(せんこう)」が挙げられます。
これはクロコダイルのウロコに見られる小さな穴で、製品がクロコダイル由来であるかの判断基準の一つとして知られています。
穿孔の特性
穿孔はクロコダイル特有の感覚器官で、他のワニの種類や型押しの革には存在しません。
穿孔の見え方
しかし、染色や仕上げの方法によっては、穿孔が目立たなくなることも。
特に「ボンベ仕上げ」や「グレージング加工」を施されたクロコダイル革では、穿孔が見えにくい場合があります。
穿孔はクロコダイル製品の鑑定に役立つ特徴の一つですが、その有無だけで製品の真偽を判断するのは適切ではありません。
クロコダイルの種類とその特徴
クロコダイルレザーは高級品として非常に人気があり、その希少性と独特の美しさから多くの人々に愛されています。「クロコダイル」と言われる皮革には、実はいくつかの種類が存在し、それぞれに独自の特徴と用途があります。
詳しくは下記の記事を御覧ください。
スモールクロコダイル(ポロサス)
スモールクロコダイル(イリエワニ)、通称「ポロサス」は、クロコダイルの中でも特に希少性が高く、最も高額で取引されています。
この素材は、HERMES(エルメス)をはじめとするヨーロッパのメゾンブランドが熱望するもので、エルメスのバーキンにも使用されています。
ポロサスは質感と光沢が特徴で、加工された皮革は最高級の品質を誇ります。
特に、マットな質感のポロサスクロコは、その独特の光沢と高い魅力を持ちます。
主に東南アジアやオーストラリアに生息しており、その最大の特徴は小さくて細かいウロコが均等に並んでいることです。
この均一な模様は、高級バッグや財布などの小物に特に適しています。
ナイルクロコダイル
ナイルクロコダイル(ニロティカス)は、アフリカのナイル川流域に生息しており、ウロコの大きさがやや大きめで、色のバリエーションが豊富なのが特徴です。
その耐久性が高く、高級品としての価値も非常に高いです。
ラージクロコダイル
ニューギニアワニは、ニューギニア島に生息しており、ウロコが非常に大きく、迫力のある模様が特徴です。
大きな製品、例えばジャケットなどの衣類に特に適しています。
シャムクロコダイル
シャムワニは、タイやカンボジアなどの東南アジアに生息しており、この種は100%養殖されているため、非常に高品質なクロコダイル革を提供しています。
高級バッグや財布などの小物製品に特に適しています。
技法・加工方法
瑪瑙磨き(めのうみがき)
クロコダイル革の加工技法の中で「瑪瑙磨き」は特に注目されるものの一つです。
この技法では、ジュエリーやアクセサリーとしても知られる瑪瑙(メノウ)を使用したローラーを用いて、クロコダイル革を丁寧に磨き上げます。
瑪瑙の特性を活かした磨き
瑪瑙はその独特の光沢を持つため、これを使ってクロコダイル革を磨くことで、革に高級感あふれる輝きをもたらします。
シャイニングクロコダイル革の誕生
手間をかけて磨き上げることで、瑪瑙の美しい光沢が革に移り、シャイニングクロコダイル革としての仕上がりを実現します。
このような独特の磨き技法によって、クロコダイル革は「革の宝石」とも称されるほどの美しさを放ちます。
また、クロコダイル専門ブランド「池田工芸」の「池田のクロ」と呼ばれる瑪瑙磨きによって生み出される深く黒艶を持つクロコダイル製品は素晴らしいです。
グレージング
グレージングは、革の表面を滑らかにし、上品な艶を引き出す技法です。
具体的には、革の表面にカゼインやワックスを塗布した後、ガラスや瑪瑙(めのう)のローラーを強い圧力で使用して磨き上げます。
この独特の仕上げ方により、過度でない、洗練された光沢が革に生まれ、その結果として「グレージング仕上げ」と呼ばれる美しいテクスチャが得られます。
池田工芸もこのグレージング技術を採用しており、その結果、クロコダイル革が一段と魅力的な輝きを放つようになります。
マット加工・仕上げ
マット加工は、革の自然な風合いと耐久性を持たせるための特別な仕上げ方法です。
染色工程での加脂により、革は柔軟性と適度な張りを獲得します。
その後、ローリングマシンを使用して革の表面を磨くことで、控えめなツヤを引き出します。
この加工により、革は柔らかく、ツヤが抑えられた仕上がりとなり、フォーマルな場面からカジュアルなシーンまで幅広く対応します。
また、使用することで手の油が染み込むことにより、色の深みが増し、ツヤが徐々に増してくる特性があります。
このような経年変化を楽しむことができるため、多くの人々から愛されています。
池田のクロ
出典:池田工芸 革財布:クロコダイル ロングウォレット内装ダブルゴールドパイソン
「池田のクロ」とは、池田工芸の代表作である「瑪瑙磨き(めのうみがき)」によって生み出される深い黒艶を持つクロコダイル製品を指します。
この独特の黒は、世界最高品種とされるスモールクロコダイル(ポロサス)を使用して実現されるもので、この高品質なクロコダイルを扱うことが許される池田工芸は、その分野での最高級のクロコダイル専門ブランドとして知られています。
無双(仕立て)
クロコダイルの無双仕立てとは、高級財布の製造方法の一つで、表革と裏革の両方に同じクロコダイルの本革を使用して豪華に仕上げたものを指します。
この仕立てには、「本無双」と「張り無双」の2つのバリエーションが存在します。
本無双は一枚の革だけを使用して製作されるのに対し、張り無双は二つの革を組み合わせて作られます。
いずれの方法も、熟練した職人の高い技術が求められるもので、その独特の美しさと品質が特徴です。
センター取り
センター取りは、クロコダイル革の中でも最も贅沢とされるお腹の部分を使用した裁断方法です。
この方法では、長財布などの製品を平らに広げた際に、裏側と表側が左右対称(シンメトリー)に見えるように革が裁断されます。
特に、クロコダイルの腹部には長方形の「竹腑」と、横腹部に丸みを帯びた小さな「玉腑」が存在します。
センター取りでは、これらの特徴的な模様が均等に配置され、美しい対称性を持つ財布や製品が作られます。
ただし、この裁断方法で使用される革は、傷や不均一な部分が目立たないような高品質なものが限られて選ばれます。そのため、竹腑のみや丸腑が入らない場合もある点を理解していただくことが重要です。
クロコダイル製品の専門用語ガイド まとめ
クロコダイル製品に関する専門用語は、製品の購入や選択の際に非常に役立つ情報となります。
以下に、本記事で取り上げた主要な用語を簡潔にまとめます。
- 竹斑(たけふ)・丸斑(まるふ):クロコダイル革の模様や特徴を示す言葉。
- スモールクロコダイル:エルメスなどの高級ブランドで使用される高価なクロコダイル種。
- グレージング:革の表面を平たくして艶を出す技法。
- マット加工:柔軟性があり、シワやキズが目立ちにくい仕上げ方法。
- 無双仕立て:一枚または二枚の革を使用して製品を仕上げる技法。
- センター取り:クロコダイル革のお腹の部分を左右対称に裁断する方法。
これらの用語を理解することで、クロコダイル製品の選択や購入時により詳しい判断ができるようになります。
本記事が、クロコダイル製品に関する知識の一助となれば幸いです。